日本の「軍事ビジネス」と防衛産業の現在地。『週刊ダイヤモンド』特集を読んで
今週の『週刊ダイヤモンド』に、日本の軍事ビジネス(防衛産業)に関する特集がありましたので、興味深く読みました。
普段、私たちが暮らす中ではあまり意識することのない分野ですが、データを紐解くと日本の製造業や経済の一端を支える重要な側面が見えてきます。
今回は、特集記事から得たデータや最近のニュースをもとに、日本の防衛産業の現状についてまとめたいと思います。
日本の防衛産業の市場規模と企業数
帝国データバンクや特集記事のデータによると、日本の防衛産業には以下のような現状があるそうです。
- 防衛省や自衛隊と直接取引がある企業:4,568社
- そのうち、兵器製造に関わる製造業:675社
- 戦闘機や戦車に関わる企業:1,000社以上
- 護衛艦に関わる企業:2,000社以上
裾野は広いですが、当時のデータ(2011年度ベース)で見ると、日本の防衛費約4.7兆円に対し、兵器製造に関わる防衛装備品市場は約2兆円。
これは国内製造業全体の1%に満たない規模であり、決して巨大市場とは言えないのが現状のようです。
世界の防衛費ランキングとの比較
世界に目を向けると、防衛費の規模には大きな差があります。
- 米国
- 中国
- ロシア(9年間で5.34倍と急増)
- サウジアラビア
- 英国
- フランス
- 日本
(※特集当時のデータに基づく順位)
海外の軍需企業、例えば米国のロッキード・マーチン社(売上4兆円規模)や英国のBAEシステムズ社(2兆円規模)などは、売上の90%以上を軍需が占めています。
一方、日本の主要メーカーは民間需要が主であり、軍需への依存度が低いのが特徴です。
日本の軍需企業 売上ベスト10と主要製品
では、日本国内ではどのような企業が防衛産業を担っているのでしょうか。
特集に掲載されていた「日本の代表的な軍需企業ベスト10(防衛部門売上)」は以下の通りです。
- 三菱重工業(3,165億/戦闘機・航空機等)
- 三菱電機(1,040億/ミサイル・レーダー等)
- 川崎重工業(948億/潜水艦・ヘリコプター等)
- NEC(799億/レーダー・電子機器等)
- IHI(483億/エンジン等)
- 富士通(401億/ネットワーク等)
- コマツ(294億/砲弾・装甲車等)
- 東芝(284億/ミサイルシステム等)
- 日立製作所(242億/情報システム等)
- ダイキン工業(149億/砲弾等)
誰もが知る大手メーカーが名を連ねていますが、各社の全体売上から見れば、防衛部門の比率は限定的であることが分かります。
大きな転換点:「防衛装備移転三原則」と輸出解禁
国内の防衛市場規模が縮小傾向にある中、大きな転換点となったのが、政府による「武器輸出三原則」の大幅な見直し(防衛装備移転三原則の閣議決定)です。
これにより、実質的な武器輸出の解禁へと舵が切られました。
人口減少や財政事情を考慮すると、今後、国内の防衛予算を大幅に増やし続けることは難しいでしょう。
国内市場が縮小するならば、海外に活路を見出すしかない。そうした官民一体の動きが加速しているように感じます。
日経新聞の記事に見る具体的な動き
実際、日経新聞にも以下のような記事が出ていました。
【政府は今月下旬に国家安全保障会議(NSC)の閣僚会合を開き、迎撃ミサイルの基幹部品、高性能センサーの対米輸出を決定する方針だ。(中略)日本が外国に武器を輸出する初のケースとなる。米国は日本から調達した部品などでミサイルを組み立て、中東のカタールに輸出する見通しだが、政府は第三国輸出による紛争助長の恐れはないと判断した。(後略)】
三菱重工業がライセンス生産する部品を米国へ輸出し、それが第三国へ渡るというスキームです。
良し悪しの議論はさておき、現実として「日本・世界の経済の一部は軍需産業で成り立っている」という側面があることは、ビジネスパーソンとして認識しておくべき事実だと感じました。
まとめ
防衛産業は特殊な分野に見えますが、技術力、サプライチェーン、そして国家の政策が複雑に絡み合う巨大なビジネスシステムでもあります。
私たちオルガロも、分野は違えど「ビジネスの仕組み」や「市場の変化」には常に敏感でありたいと思います。
市場環境が変われば、戦略も変わる。それはどの業界でも共通することですね。